ここで,アメリカの大学の入学生度を見ておくことは重要だ。AO入試とはアメリカの大学で入試を担当する部局であるAO(アドミッションズ・オフィス)からネーミングされたものだからだ。
しかし,そもそもアメリカには「AO入試」なるものは存在しない。AOが実施する選抜には「知識伝授型」に対する「創造性開発型」といった意味は全くない。元々アメリカには個々の大学が行う「入試」が存在しないのだ。どこの大学でもAOが入学者を決定するが,すべて同じような書類選抜であり,他の選抜方法があるわけではない。
アメリカの大学では,入学者の決定と受け入れまでの作業はAOが行う。これは全米のすべての大学で変わらない。AOには教員はいない。すべてが事務職員で構成されている。
入学決定者は,志願者から提出された書類をもとに,職員が行う。教員は直接にはかかわらない。この意味は,アメリカには各大学独自の「入試」が存在しないということだ。そこには「入試」にかかわる業務がいっさい存在しない。ここが肝心なところである。
中井浩一 (2007). 大学入試の戦後史:受験地獄から全入時代へ 中央公論新社 pp.108-109
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