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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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米国の入試制度

 「入学選抜」がないのではない。それを説明するには,アメリカの大学全体について見てみなければならない。アメリカの大学の入学時の制度は大きく3つに分けられる。
 「開放入学制」「資格選抜制」「競争選抜制」の3つだ。
 「開放入学制」の大学は2年制の公立大学,コミュニティカレッジなどであり,高校の卒業あるいは18歳になったことを条件にして全員無条件で入学を許可するものだ。
 「資格選抜制」の大学は,全米各州の州立大学などであり,各大学が設定した入学要件をクリアした全員に入学を許可するもの。入学要件とは,高卒資格を前提に,(1)SAT,ACTなどの全米の統一試験の成績,(2)高校の成績(GPA)などで決められている。4年制大学全体の75%ほどがこれになる。
 「競争選抜制」の大学は有名私大や上位の州立大などであり,一定の入学要件を満たしている者の中から,さらに選抜する。4年制大学全体の15%ほどがこれになる。
 「入学選抜」を行っているのは「競争選抜制」の大学だけである。しかし,その選抜とは,先に述べたように各大学が「入試」を行うのではなく,書類で選抜するだけなのだ。ではその「選抜」とはいかなるものなのか。
 高卒資格を前提に,(1)SAT,ACTなどの全米統一試験の成績,(2)高校の成績(GPA)を評価する点は「資格選抜制」と変わらない。変わるのは,それ以外にも(3)高校からの調査書,(4)本人からの志望理由などの個人調書を加味して決める点だ。
 このうち,(3)(4)はAOの職員が2人以上で読み,ABCの評価をする。2人の違いが大きい時には3人目が判断するシステムになっている。ある程度の能力が必要だが,機械的な作業でありトレーニングすれば誰にでもできるという。日本のAO入試では面接が一般的だが,アメリカでは基本的には行わない。
 選抜はこの(1)から(4)の4種類の評価を足して上から順位を出して行われるのだ。その際に,この(1)から(4)をどの割合で足すかを決めるのが「アドミッション・ポリシー」であり,数値で示される。それを決めるのは,私大ではAOのディレクターと教員代表,大学の執行部で作る入試委員会や,州立大では州高等教育協議会などである。ここだけ教員代表が選抜にかかわることができるのだ。
 「アドミッション・ポリシー」とは,「多様性」や「独自性」などといったお題目ではない。それは,(1)から(4)をどの割合で評価するかという数値にまで具体化されたものなのだ。そして数値比率が決まれば,後は自動的に選抜が行われるだけである。

中井浩一 (2007). 大学入試の戦後史:受験地獄から全入時代へ 中央公論新社 pp.109-111
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