人間的な環境で育たなかった子どもは,「野生児」と総称される。これには,3つのカテゴリーがある。まず,野生の動物に育てられた場合。森などに遺棄されたあと自力で生き延びた場合。そして,人為的に社会から隔離して育てられた場合である。最後のカテゴリーは(家の中に閉じ込められていることから),前者2つと区別するために,「クローゼット・チャイルド」と呼ばれることもある。
第1のカテゴリーの代表が,アマラとカマラである。第2のカテゴリーの事例は,1799年に南西フランスのアヴェロン県のコーヌの森で見つかったヴィクトールである(「アヴェロンの野生児」と呼ばれる)。第3のカテゴリーの代表として,1828年にドイツのニュルンベルクに現れたカスパー・ハウザーの事例や,1970年にロサンゼルスで保護されたジニーの事例がある。
鈴木光太郎 (2008). オオカミ少女はいなかった 心理学の神話をめぐる冒険 p.29
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