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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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認知的容易性

 人間は,意識があるときはいつでも,いや,おそらくないときでさえ,脳の中でたくさんの情報処理を同時に行っており,いくつもの重要な質問に対する答を常時アップデートしている。たとえば,何か目新しいことが起きていないか,何か危険な徴候はないか,万事うまくいっているか,新たに注意を向けるべきものはあるか,この仕事にはもっと努力が必要か,といった質問である。重要な変数の現在値を示す計器がずらりと並んだコックピットを考えるとよいだろう。数値の評価はシステム1が自動的に行う。システム2の応援が必要かどうかを決めるのも,システム1の役割である。
 コックピットには,「認知的容易性(cognitive ease)」を示す計器がある。針が「容易」のほうに寄っていれば,ものごとはうまくいっていると考えてよい。何も危険な徴候はなく,重大なニュースもなく,新たに注意を向けたり努力を投入したりする必要はない。一方,「負担」のほうに寄っていれば問題が発生しており,システム2の応援が必要になる。認知的負担は,その時点での努力の度合いや満たされていない要求の度合いに影響される。驚くのは,認知的容易性を計測するこのたった1つの計器が,さまざまなインプットとアウトプットを結ぶ大規模なネットワークに接続していることである。

ダニエル・カーネマン (2012). ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるか?(上) 早川書房 pp.89
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