たとえば,あなたの会社でセールスマンを採用するとしよう。あなたが真剣に最高の人材を雇いたいと考えているならば,やるべきことはこうだ。まず,この仕事で必須の適性(技術的な理解力,社交性,信頼性など)をいくつか決める。欲張ってはいけない。6項目がちょうどよい。あなたが選ぶ特性は,できるだけ互いに独立したものであることが望ましい。また,いくつかの事実確認質問によって,その特性を洗い出せるようなものがよい。次に,各項目について質問リストを作成し,採点方式を考える。5段階でもよいし,「その傾向が強い,弱い」といった評価方式でもよい。
この準備にかかる時間はせいぜい30分かそこらだろう。このわずかな投資で,採用する人材のクオリティは大幅に向上するはずだ。ハロー効果を防ぐために,面接官は項目ごとに,つまり次の質問に進む前に評価させる。また,質問を飛ばしてはいけない。応募者の最終評価は,各項目の採点を合計して行う。あなたが最終決定者の場合,「目を閉じて」はいけない。合計点が最も高い応募者を採用すること。この点は,強く心に決めなければならない。ほかに気に入った応募者がいても,そちらを選んではいけない。順位を変えたくなる誘惑に,断固抵抗しなければいけないのである。
膨大な量の研究は,こうした状況で現在一般に行われているやり方よりも,今説明した手順に従うほうが,最高の人材を選べる可能性がはるかに高いことを約束している。つまり,さしたる準備もなく面接を行い,「私は彼の目を見つめ,そこに現れている強い意志に感動した」といった直感に従って採用を決めるよりも,ずっとましだということである。
ダニエル・カーネマン (2012). ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるか?(上) 早川書房 pp.335-336
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