超宗教運動---。教皇が話しているのは「ニューエイジ運動」(New Age movement)とその周辺の動きのことである。ニューエイジとは米国で70年代以降に広まった,スピリチュアリティを重んじる信念や実践の総称だ。運動といっても中心となる組織があるわけではなく,小さなグループがゆるやかなネットワークでつながっているだけだ。個人主義的な傾向がきわだち,グループは基本的に出入り自由だ。ある程度まとまった思想傾向としては,なにか神的なものや霊的なものが宇宙や自然,人間のなかにあるという汎神論的な特徴がある。そうした「聖なるもの」とつながるために,たとえば瞑想やヨガ,さまざまな心理的な技法などを使って,こころの成長や意識の変容を目指す。
ニューエイジは英国をはじめとする欧米諸国,オーストラリアなど先進諸国を中心に,比較的ゆたかな層をまきこんでいった。日本には70年代後半に上陸し,「精神世界」と呼ばれた。80年代からは書店にコーナーが常設されるほどになった。
しかし,精神世界というひびきが古くさく感じられるようになり,2000年以降になると,「スピリチュアル」ということばが使われだした。オウム真理教を思い出させる暗いひびきをリセットしたいという情報提供側の事情と重なった。最近のブームである「スピリチュアル」のなかにはニューエイジの流れをそのまま引き継いでいるものも少なくない。
磯村健太郎 (2007). <スピリチュアル>はなぜ流行るのか PHP研究所 p.55-56
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