長い旅路の末に,ゲーリー・クラインと私は,最初の質問である「経験豊富な専門家が主張する直感はどんなときなら信じてよいか」に対して答を出すことができた。私たちの結論は,有効である可能性の高い直感といんちきである可能性の高い直感を区別するのはほとんど場合に可能だ,というものである。美術作品を本物か偽物か判断するときと同じで,作品自体を見るよりもその出所来歴に注目するほうが,よい結果が得られることが多い。その直感が十分に規則性の備わった環境に関するものであって,判断をする人自身にその規則性を学習する機会があったのなら,連想マシンがすばやく状況を認識して正確な予想と意思決定を用意してくれるだろう。この条件が満たされているなら,あなたはその人の直感を信用してよい。
ダニエル・カーネマン 村井章子(訳) (2012). ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるのか(下) pp.20-21
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