あなたが何らかの選択をするとき,「後悔するかもしれない」という予見に強く影響されるのは,妥当と言えるだろうか。人間が後悔しやすいのは避けがたい人生の現実なのだから,賢く付き合っていかなければならない。もしあなたが十分に裕福で用心深い投資家なら,たとえ資産を最大限に増やせはしないとしても,後悔の可能性を最小限に抑えるポートフォリオを構築する贅沢を選べるだろう。
また,起こりうる後悔に対して先手を打っておく方法もある。おそらくいちばん効果的なのは,予想される後悔をあらかじめ書き出しておくことだ。そうすれば,悪い結果になったとき,自分は決定する前にちゃんとその可能性を考えておいたのだと思い出し,あまり後悔に苛まれずにすむはずだ。また,後悔は後知恵バイアスとセットになっていることが多いので,あらかじめ後知恵を排除しておくとよい。私自身は後知恵対策として,長期的な結果を伴う決定を下す際には,徹底的に考え抜くか,でなければごくいい加減にざっくりと決めるか,どちらかにしている。中途半端に考えるのがいちばんよくない。ことが起きてから,「あのときもう少し考えればもっといい決断を下せたのに」ということになる。
ダニエル・カーネマン 村井章子(訳) (2012). ファスト&スロー:あなたの意思はどのように決まるのか(下) pp.177-178
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