宇宙が膨張する以前はどうだったかと一生懸命考えたのが,ロシア出身の理論物理学者ジョージ・ガモフでした。
ガモフはまず宇宙を形づくっている元素の分布に注目しました。中でも水素に目をつけ,水素ガスは陽子と電子でできており,これを圧縮していくと陽子と電子が結びついて中性子になる,つまり宇宙の最初の状態は中性子に満たされた超高密度の高温状態であると仮定しました。なぜそう考えたかというと,宇宙が冷たい状態ならヘリウムが少ししか生まれない,これほど多くのヘリウムが存在するには,宇宙が高温高圧の火の玉状態である必要があると考えたのです。
ガモフは,宇宙が膨張するずっと前の段階では,「とてつもなく密度が高い火の玉の状態がどこかにあるはずだ。そうでないと辻褄が合わない」と考えました。これを「αβγ(アルファ・ベータ・ガンマ)理論」といいます(1948年に発表)。
この考えに異議を唱えたイギリスの天文学者フレッド・ホイルが,出演したラジオ番組の中で,「やつらは宇宙が大きな爆発(ビッグバン)ではじまったといっている」といって揶揄したのを,ガモフがおもしろがってあちこちで使っているうちに「ビッグバン」という名称が定着していったそうです。
懸 秀彦 (2012). オリオン座はすでに消えている? 小学館 No.829-837/1700(Kindle)
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