そもそも子の字というのは,もとは男性を意味する字でした。いまでも「王子と王女」「息子と娘」という言葉にそれが表されています。
そして古代の中国では,孔子,孟子というふうに,男性を尊敬して使う字でした。古代日本でも,小野妹子,蘇我馬子という男性がいたのは有名です。
子の字は,奈良時代の皇族のあいだで,はじめて女性に使われはじめたようですが,その後も皇族や,身分の高い女性にしか使われませんでした。有名なのは日野富子,北条政子などです。
名字になって一人一氏名の制度となったとき,まず皇族の女性たちに子のつく名前がつけられました。それからだんだんと,一般庶民に広まっていったのです。
男の子の名でも,典,亮,介,輔,佑,夫,将,士,司,史,蔵,守,平(兵衛)などの字が増えましたが,それらももともとは官職をあらわす字でした。
明治のころは「高い地位」「上流社会」にたいする庶民のあこがれがあったようです。
昭和50年代のなかばごろから,○子という名前のパターンがくずれ,名前の種類が急激に増えてきて,子のつく名前は減っていきました。
牧野恭仁雄 (2012). 子供の名前が危ない KKベストセラーズ pp.80-81
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