専門化は現代医療の根本理念だと言っても過言ではない。20世紀の初頭ならば,高校を卒業し,医学学校に1年間通えば医者になれた。だが現在では,4年制の大学と4年制のメディカルスクールを卒業し,小児科,外科,神経内科などの専門を1つ選んで3年から7年の研修を修了しなければならない。さらに最近の若い医者の多くはフェローシップに進む。そこで専門トレーニングを1年から3年受け,内視鏡手術,小児代謝疾患,乳がんの画像診断,集中治療などの超専門家になるのだ。だから最近の「若い医者」はあまり若くない。30代半ばまで独り立ちできないのが普通だ。
現代は超専門家の時代なのだ。医者は特定の狭い分野で訓練に訓練を重ね,超専門家になる。超専門家たちは普通の医者よりも細かい知識を持ち,より複雑な問題にも対応できる。だが,医療はあまりに高度化し超専門家でさえも日常的にミスを完全に防ぐのは不可能になってきている。
アトゥール・ガワンデ 吉田 竜(訳) (2011). アナタはなぜチェックリスト使わないのか?:重大な局面で“正しい決断”をする方法 晋遊舎 pp.38
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