ヨーク大学のブレンダ・ジマーマン教授とショロム・グルーバーマン教授は,複雑性について研究を重ねてきた。2人によれば,世の中の問題は3つに分類できるという。
1つ目は「単純な問題」だ。ケーキの焼き方などがこれにあたる。いくつかの基本的な技術を学ぶ必要はあるかもしれないが,それらを覚えてレシピ通りにやれば高確率で成功する。
2つ目は「やや複雑な問題」だ。ロケットを月へ飛ばすのはこれにあたる。複数の「単純な問題」に分解できることもあるが,単純なレシピは存在しない。予期せぬ困難が頻発し,チームワークと専門知識が成功には不可欠だ。タイミングや協調が重要な課題となる。
3つ目は「複雑な問題」で,子育てが良い例だ。月へのロケットは,1度やり方がわかれば,また同じやり方で飛ばせる。何度も繰り返すことによって,飛ばし方を改良していくこともできる。だが,子供は1人1人が違う。1人子供を育てたからといって,次がうまくいく保証はない。経験は有用だが,それだけでは不充分だ。次の子には全く違う育て方が必要かもしれない。「複雑な問題」は先行きが非常に不透明なのだ。だが,うまく子供を育てるのが不可能というわけではない。複雑だというだけだ。
アトゥール・ガワンデ 吉田 竜(訳) (2011). アナタはなぜチェックリスト使わないのか?:重大な局面で“正しい決断”をする方法 晋遊舎 pp.60-61
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