どの専門職にもプロフェッショナリズムというものがある。その職務の理念と義務をまとめた,行動の規範だ。どこかに書かれている時もあるが,共通意識として存在しているだけの場合もある。いずれにしろ,プロフェッショナリズムには3つの要素が必ず含まれている。
第1に無私であること。医師,弁護士,教師,公務員,兵士,パイロットなど,どの職業であれ,他人から責任を預かる者は,自分の利益よりも頼ってくる者の問題や心情を考えるべきだ。第2に腕があること。技術と知識を日々研鑽することが求められている。第3に信用に足ること。自分の職務に誠実な態度で臨む必要がある。
航空業界の人々は,そこに4つ目を加えた。規律だ。よくできた手順には絶対に従うこと。必ず他者と協力しあうこと。医療を含む,他の多くの業種では考えられないようなことだ。医療では自主性こそがプロの証だと考えられているが,自主性は規律の対極にある。だが,大きな病院,何人もの医者,リスクの大きい治療法,そして1人ではとても習得しきれない膨大な量の知識を要する現代医療では,個人の判断に任せるのは愚策だ。古い価値観にしがみついていては良い医療は提供できない。時々思い出したように「仲良く協力しあいましょう」といっているようでは駄目なのだ。本当に必要なのは,絶対に協力しあうという決まりを作り,常にそれに忠実であることだ。
アトゥール・ガワンデ 吉田 竜(訳) (2011). アナタはなぜチェックリスト使わないのか?:重大な局面で“正しい決断”をする方法 晋遊舎 pp.209-210
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