心理学者のB.F.スキナーとC.B.フェスターの1957年の古典的な著作『強化スケジュール』以来,行動を後押し(強化)する刺激が不規則なタイミングで与えられると——行動心理学の分野では「変動スケジュール」と呼ばれる——中毒性がきわめて強いことがわかっている。スキナーの研究によれば,鳩に始まり霊長類にいたるまで,動物はことごとく,ご褒美が不規則なタイミングで与えられて,しかもご褒美が与えられた瞬間にその恩恵を味わえる場合,そのご褒美を得るための行動にものめり込む。
「変動スケジュール」の威力は,ギャンブルの世界ではっきり見て取れる。たとえばカジノのスロットマシンは,プレーヤーを中毒状態にさせるべく,このメカニズムを意識的に織り込んでいる。スロットマシンで「当たり」が出るタイミングは不規則だし,「当たり」が出れば即座にコインを手にできる。おじいちゃんやおばあちゃんがスロットマシンにのめり込んで,かわいい孫に残せたはずの財産をなくす姿を見れば,モチベーションの心理学の説得力が理解できるだろう。
ピアーズ・スティール 池村千秋(訳) (2012). 人はなぜ先延ばしをしてしまうのか 阪急コミュニケーションズ pp.96-97
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