仕事を先延ばしする人が最もよく口にする言い訳は,「追い込まれたほうがいいアイデアが浮かぶんですよ」というものだ。そう感じる理由は,非常にはっきりしている。締め切り間際にならないと仕事に手をつけないとすれば,もっぱら締め切り直前にアイデアが生まれるのは当たり前のことだ。
しかし,土壇場で生まれるアイデアは,早い段階から取りかかる場合より質も量も劣る。厳しいスケジュールのもと,強いプレッシャーがかかる状況では,概して人間の創造性が低下するからだ。締め切り前夜に突貫工事で課題に取り組み,目がしょぼしょぼしてきた午前3時に思いついたアイデアは,たいてい平凡で,ぱっとしない。画期的なアイデアとは,一般的に,念入りな準備の上に花開くもの。骨折って題材への理解を深めたうえで,時間をかけてアイデアを「孵化」させる必要があるのだ。
ピアーズ・スティール 池村千秋(訳) (2012). 人はなぜ先延ばしをしてしまうのか 阪急コミュニケーションズ pp.123
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