普通の人の目から見れば,あれだけお互いに残虐なテロやリンチをやりあえば,みんないやになって組織を抜けたがっているだろうと思われるかもしれない。どちらの組織にも千人単位の人間が残って頑張っているのが不思議に思われるだろう。ちょうど帝政期のローマ人たちが,次々に虐殺されながらも,なおも自分たちの信仰を守って頑張りぬくキリスト教信者たちに奇異の目を見張ったように。
しかし,これは不思議でも何でもない。政治的信仰でも,宗教的信仰でも,弱い信仰の持ち主には暴力による脅迫が有効だが,確信者・狂信者に対しては,無効なのである。無効どころか逆効果なのである。拷問も処刑もききめがない。
信仰心の弱い者には一定のききめがあることから,しばしば思想・宗教の弾圧に暴力が用いられてきた。しかし,いつでもそうした暴力は確信者・狂信者の壁にあたってはねかえされてきた。
立花 隆 (1983). 中核VS革マル(下) 講談社 pp.229
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