私が出会った超常現象の信者を見て気づいたのは,誰もが“出口なき信仰”というシステムを持っているということだった。つまり,あまりにも強くXを信じているため,Xを立証できないものは無視され,Xに当てはまる出来事はすべて拡大解釈される。たとえば,サイキックヒーラーとして働いていた親しい友人の女性がこんな話をしてくれた。
目の前でボイラーが破裂して腕にひどい火傷を負った男性を,あるパーティの席で治療したときのことだ。彼女の言い草に注目して欲しいのだが,男性にしばらく手をかざしていると,痛みと水ぶくれが「あっという間に引いてきた」というのだ。この話が事実かどうか,同じパーティに参加していた共通の友人に確認すると,彼は声を立てて笑った。たしかに彼女はその男性の体に手をかざしてはいたけれど,それは氷と雪で1時間以上冷やしたあとの話だったのである。超能力をもつその友人は,私を騙そうとしたわけではない。氷雪でパックした話は,語るほどのことではないと省いただけなのだ。事実,その一件は彼女にとっては自分の能力を確認できたエピソードであり,それは彼女の信念に油を注いだ。
ダレン・ブラウン メンタリストDaiGo(訳) (2013). メンタリズムの罠 扶桑社 pp.26-27
PR