つまり,マジックとは何かというと,ごまかしや,すり替えや,膝の上にコインを落とすことではない。相手を手際良く,巧みに誘導し,不思議な体験をしているのだと思わせるような関係を相手とのあいだに踏み込んで作り上げることだ。子どものようにびっくりする体験ともどこか似ているが,大人の知的なナゾナゾのような要素もある。それは観客の頭の中にしか存在しない体験で,その体験はきみの技術が導き出したものかもしれないが,技術そのものと体験は同じではない。それは観客の体験の中にあり,マジシャンが使っている手法の中で見つかることはないのだ。つまり,何より大切なのはプレゼンテーションということになる。かの有名な,素晴らしいマジシャンであるユージン・バーガー(クロースアップ・マジシャンの権威である)は,3つか4つのトリックを学ぶだけに残りの人生をすべてかけることだってできる,と言っている。
ダレン・ブラウン メンタリストDaiGo(訳) (2013). メンタリズムの罠 扶桑社 pp.54
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