「俗に浅草フランス座がストリップ界の東京大学といわれていた。そして新宿フランス座が早稲田大学,池袋フランス座が立教大学,浅草ロック座がなぜかストリップ界の日本大学ということになっていました。
仮にも大学というからには,高校があるはずですが,これに当たるのは,浅草の百万ドル劇場,美人座,浅草座といったところ。あるいは横浜セントラルなどの東京周辺の小屋でしょうか。この伝で云えば,喜劇役者の中学は地方巡回劇団ということになります。
また『大学』卒業後にもそれなりの進路があって,丸の内の日劇ミュージックホールが東大大学院でしょうか。ここを経て,日劇の『春の踊り』や『夏の踊り』に出演すると,いわば大蔵省へ入省したようなもの。さらにここから映画に出るとか,そのころ仕事を始めたテレビに行くとか,社会の中に喜劇役者のための登攀装置が埋め込まれていたのです。逆に云えば,一人前の喜劇役者になるには,生の舞台で,それも厳しい観客の前で,長い間,修行しなければならなかった」(『浅草フランス座の時間』)
松倉久幸 (2011). 浅草で,渥美清,由利徹,三波伸介,伊東四朗,東八郎,萩本欽一,ビートたけし…が歌った,踊った,喋った,泣いた,笑われた。 ゴマブックス No.456-465(Kindle)
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