しかし入試制度に関して入試問題より重大と思われるのは入学定員の問題である。先述したとおり,現在は定員内であればどんな受験生でも原則合格させなければならないというルールが有る。そのため高校で学ぶ気がまったくない生徒や普通高校での勉強についていけない能力の生徒も合格させざるを得ない事態を引き起こしている。
実際に現場にいる教師は,このルールにいつも歯がゆい思いをさせられる。教育へ「民営化」視点を導入し,個々の学校の競争と効率化を煽るのなら,この定員内全員合格のルールの可否を各学校に委ねてほしいと切に願う。中学校からも「あれだけやりたい放題やっていてすんなり高校に入ってしまったら他の生徒に示しがつかない。ぜひ落としてほしい」といわれている生徒,入っても周囲に迷惑をかけるだけとわかっている生徒を入れざるを得ない専攻会議の辛さ,重苦しさはたまらないものがある。
朝比奈なを (2006). 見捨てられた高校生たち:公立「底辺校」の実態 新風舎 pp.112-113
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