レジリエンスという用語はさまざまな分野で少しずつ違った意味で用いられるため,厳密に定義するとなるとひと筋縄ではいかない。土木工学の分野では,一般的には橋や建物などの構造物が損傷を受けたあとでベースラインまで回復する性能を意味する。緊急時の対応力については,市民生活に欠かせないシステムが自信や洪水の被害からどのくらいのスピードで復旧できるかを指す。生態学では回復不能な状態を回避する生態系の力を意味し,心理学ではトラウマに効果的に対処する個人の能力を意味する。ビジネスでは,自然災害や人災に遭遇しても業務を継続できるように(データや資源の)バックアップを整備する意味で用いられることが多い。力点こそ異なるが,これらの定義は変化に直面した際の継続性と回復というレジリエンスの2つの本質的な側面のいずれかに基礎をおいている。
アンドリュー・ゾッリ,アン・マリー・ヒーリー 須川綾子(訳) (2013). レジリエンス 復活力:あらゆるシステムの破綻と回復を分けるものは何か ダイヤモンド社 pp.9-10
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