「崩壊を避ける唯一の方法は,蒸気機関とか,電気,コンピュータ,インターネットに匹敵するものを生みだすことでしょう」とウェストは言う。「難しいのは,生きるスピードが加速するのに応じて,イノベーションを創出するスピードも加速する必要があるということです。私の腕時計はあてになりません。世界はもはや線形の時間軸で進行していないのです。成長とイノベーションは日増しに加速しているのですから」
成長のうねりは次第に大きくなり,加速している。そんななか,順調に機能している都市は,いかsにして絶え間なくイノベーションを創出し,自らの姿を変え,1つの成長曲線からつぎの成長曲線へと乗り移っているのか。その答えは,都市の大きさではなく,多様性の凝縮にある。
都市とは,地域社会,ネットワーク,イノベーター,インフラストラクチャーなど,多様な小さな要素が積み重なった集合体だ。こうした要素は,さまざまな人や集団を結びつけ,緩やかで形式ばらない,流動的な協力関係を生みだす。ニューヨークに暮らし,都市計画の概念に影響を与えた活動家ジェイン・ジェイコブズの有名な著作には,コラージュのように多様性がひしめくウェストビレッジの活気あふれる風景が描写されている。地元紙を手にした売り子,パトロール中の警察官,すれ違う通勤者たち——そのひとりひとりが,異なる価値観と目的意識が織りなす複雑な階層構造の一部をなしている。
アンドリュー・ゾッリ,アン・マリー・ヒーリー 須川綾子(訳) (2013). レジリエンス 復活力:あらゆるシステムの破綻と回復を分けるものは何か ダイヤモンド社 pp.128-129
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