「連続殺人犯は家族をめちゃくちゃにするが」ボブは肩をすくめた。「企業や,政治や,宗教の世界にいるサイコパスは経済をめちゃくちゃにする。社会をめちゃくちゃにするのだ」
これは,あらゆる謎のなかで最大級の謎,「世界はなぜこれほど不公平なのか?」に対するストレートな答えだ,とボブは言う。過酷な経済的不公平,数々の残忍な戦争,日常的に見られる企業の無慈悲な手口——それらに対する答え,それが,サイコパスなのだ。正常に機能しないサイコパスの脳のせいなのだ。エスカレーターに乗っているとき,あなたは反対側のエスカレーターに乗っている人々とすれ違う。もし彼らの脳の中に入り込むことができるなら,あなたは,私たちがみんな同じではないことを知るだろう。まわりにいるのは,善い行いをしようとしている善人ばかりとは限らない。私たちの何人かはサイコパスだ。そして,この残忍で歪んだ社会ができたのは,サイコパスのせいなのだ。彼らは静かな池に投げ入れられた石なのだ。
ジョン・ロンソン 古川奈々子(訳) (2012). サイコパスを探せ!:「狂気」をめぐる冒険 朝日出版社 pp.141
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