どう考えたらよいかわからなかった。世の中には,症状の現れ方が奇妙な病人がたくさんいる。そうした病人を,自分たちのイデオロギーではそれは病気ではないからという理由によって,基本的に正気と決めつけてしまうレディ・マーガレットや,サイエントロジストをはじめとする反精神医学主義者のやり方は不適切に思われる。診断基準に疑問を呈することと,実際にとても苦しんでいる病人たちの珍しい症状を馬鹿にすることの境界はどこにあるのだろうか?CCHRはかつて,ただ「鼻をほじっていた」という理由で子どもに薬物療法をしようとした両親を非難するプレスリリースを発表したことがあった。
精神科医たちは,鼻ほじりから利他主義,宝くじや<アクションドール>で遊ぶことまで,すべてに精神病のラベルを貼ってきた。綴字傷害や算数障害やカフェイン離脱といったDSMに記載されている精神障害は,がんや糖尿病などの病気と同じくれっきとした病気であるという誤った考えを売り込んでいるのである。
——ジャン・イーストゲイト(国際市民の人権擁護の会CCHR会長),2002年6月18日
じつは,この親たちは子どもがただ鼻をほじったから薬物療法を受けさせたわけではなかった。顔の骨が露出するまで子どもが鼻をほじったから薬物療法を受けさせたのだった。
ジョン・ロンソン 古川奈々子(訳) (2012). サイコパスを探せ!:「狂気」をめぐる冒険 朝日出版社 pp.287-288
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