「米国では多くの病気で過剰診断がなされているが,小児双極性障害は,その影響を考慮すれば,最も憂慮すべき最新の例であると言えるだろう」
イアン・グッディヤーはケンブリッジ大学の小児・青少年精神医学の教授である。彼は小児双極性障害という病気が存在するとは考えていない。米国以外で診療している精神科医と小児精神科医のほとんどすべてと,米国の医師の多くも彼と同じ意見だ。
「この考え方の主唱者たちが述べている小児双極性障害の流行といったような現象は,疫学研究ではまったく発見されていない」と彼は言った。「双極性障害というのは青年期後期から現れる病気だ。実際,この病気にかかっている7歳未満の子どもに遭遇することは,非常に非常にまれなことだ」
アメリカでは現在,莫大な数の7歳未満の子どもが双極性障害と診断されている事実を考えると,これはまったく奇妙な話だ。
「そういう子どもたちは確かに病気かもしれないし,なかには非常に重症で,大きな問題を抱えている子もいるだろう。だが,彼らは双極性障害ではない」とイアン・グッディヤーは言った。
ジョン・ロンソン 古川奈々子(訳) (2012). サイコパスを探せ!:「狂気」をめぐる冒険 朝日出版社 pp.300-301
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