フロイトは非常に重要な発見をしたと思うし,他の人々によってなされた発見に注意を向けたと思う。そのおかげで,僕たちは変化した。僕たちははや,気まぐれな偶然を信じない。たとえば,君が約束を忘れたとしたら,それには理由がある。彼は必ずいつも正しい理由をあげたわけではないと思うが,僕は彼の決定論を受け入れている。彼の大きな誤りは,心の装置と呼ぶものを作り出したことだと思う。ドイツの意思心理学から生まれたすばらしい創作だが,それは悲劇的だった。もし彼が,自我,超自我,イドという3つのパーソナリティに頼らずに事実を体系化していたら,心の地形学や地理学,意識,前意識,無意識に頼らなかったら,もっとずっと前進していただろう。でも,そんなに注目もされなかっただろうね。この論理的なものに魅力があるのはまちがいない。それは深遠な感じ,深みのある感じを与えてくれる。精神分析家は深みとか深層とかいうことばが大好きだ。そしてスキナーは表面的だと言いたがる。自分たちのほうが深みがあるとね。僕は,彼の治療は精神分析家たちが考えるほど成功したとは思わない。アイゼンクの批判は少々極端かもしれないが,それほど行き過ぎているわけでもないと思うよ。
(by バラス・スキナー)
デイヴィッド・コーエン 子安増生(監訳) 三宅真季子(訳) (2008). 心理学者,心理学を語る 時代を築いた13人の偉才との対話 新曜社 p.359-360
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