DSM-IIIの出版が決められた時には,開発者たちには特別な実地試験のデータがあったので,新版は(DSM-IIに比べ)「遥かに大きな」「素晴らしく良い」「かつてないほどの」「以前よりはるかに良い」信頼性が期待されるので,「元気づけられる」と臆面もなく言えた。1982年に出た論文では,彼らはさらにボルテージを上げ,DSMの信頼性を「信じられないくらい良い」などと言っている。
そうした主張をするにあたって,開発者たちはやや新しい統計的な指標(「カッパ」という合意を計測するための指標)を使い,データを大きな表にして発表した。この表は,専門家にも判読不能な複雑なもので,DSM-IIとの直接比較もなされていなかった。ほとんどの臨床家は,そうした数字の出所となった研究を批判できる立場になかった。というわけで,彼らは「信頼性があり科学的である」という開発者たちの主張を受け入れてしまった。
ハーブ・カチンス,スチュワート・A・カーク 高木俊介・塚本千秋(監訳) (2002). 精神疾患はつくられる:DSM診断の罠 日本評論社 pp.68-69
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