ゴミ捨てを引き受けるかどうか,朝相手にコーヒーを淹れてあげるかどうか,物理的にそこにいるかどうかといったことも,人間関係を表現します。でも会話は人間関係と切り離せません。人間関係で大事なのは,何をするか,何を考えるか,何を感じるかだと普通思われているでしょうけど,ことばこそ人間関係の見方の基礎です。関係はすべて言語によって,しゃべることを通して作られます。典型的な会話を考えてみましょう。その日の出来事を女性がしゃべり,男性がその問題を解決する方法を提案します。彼女は,私は解決策がほしいんじゃないの,聞いてもらいたいのって言うでしょう。あるレベルで,これが関係のありようです。それはそのように会話することによって作られるからです。それが親密さをつくり,親密さを表現します。もちろん,お互いに相手を大事に思っているでしょうけど,お互いについて知ることが親密さを作り出し,相手の人生の細部について知っていること自体が親密さの構成要素なのです。
(by デボラ・タネン)
デイヴィッド・コーエン 子安増生(監訳) 三宅真季子(訳) (2008). 心理学者,心理学を語る 時代を築いた13人の偉才との対話 新曜社 p.395
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