それどころか,過度の刺激は学習を阻害するようだ。最近の研究によれば,森の中を静かに散歩した人は,騒音が溢れる街中を歩いた人よりも学習効果が高いと判明した。多種多様な分野の3万8千人の知識労働者を対象にした別の研究では,邪魔が入るという単純なことが,生産性を阻害する最大の要因のひとつだとわかった。一度に複数の仕事をこなすことは,現代の会社員にとって賞賛される偉業だが,これもまた神話だとわかった。人間の脳は一度に二つのことに注意を払えない,と科学者は知っている。一度に二つのことをこなしているように見えても,じつは2つの作業のあいだを行き来しているだけで,生産性を低下させ,ミスを最大で50%も増加させる。
多くの内向型が,このことを本能的に知っていて,ひとつの部屋に大勢で閉じ込められるのを嫌う。カリフォルニア州オークランドのゲーム制作会社<バックボーン・エンターテインメント>では,当初オープンオフィス・プランを採用していたが,内向型が多いゲーム製作者たちから居心地が悪いという声が聞こえてきた。「なんだか大きな倉庫にテーブルが置いてあるみたいで,壁もないし,おたがいに丸見えだった」とクリエイティブ・ディレクターだったマイク・マイカは回想する。「そこで,部屋に仕切りをしたのだが,クリエイティブな部門でそれがうまくいくかどうか心配だった。ところが,結局のところ,誰もがみんな人目につかないで隠れられる場所を必要としていたとわかった」
スーザン・ケイン 古草秀子(訳) (2013). 内向型人間の時代:社会を変える静かな人の力 講談社 pp.107-108
(Cain, S. (2012). Quiet: The power of introversion in a world that can’t stop talking. Broadway Books: St. Portlamd, OR.)
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