若者の就職難が問題なのは,若者たち自身の「チャンス」や「可能性」を閉ざしてしまうということもあるが,それ以上に,それが今後の日本の「経済基盤」を崩壊させ,「社会不安」や「社会保障システム」の機能不全を引き起こしてしまう「社会問題」であるからなのである。
そして,キャリア教育とは,そうした事態に対処するための“教育的な処方箋”にほかならなかった。「将来の目標が立てられない,目標実現のための実行力が不足する若年者」を鍛え直し,テコ入れすること,そのことによって若年雇用問題の深刻化に対処することが,キャリア教育のねらいである。
ここまであけすけに言ってしまうと,当事者である若者には少なからぬショックを与えてしまうだろうか。しかし,事実は事実として認識しておく必要がある。そして,そうした経緯で登場したのが「キャリア教育」であるならば,そこにはどこか“眉唾もの”のにおいがしたとしても決して不思議ではない。
児美川孝一郎 (2013). キャリア教育のウソ 筑摩書房 pp.38-39
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