人が仕事をするとは,個人が好きなことをして,自己実現をめざすという側面だけで成り立っているわけではない。仕事には,社会的分業の中でどこかの「役割」を引き受けるという側面がある。
だからこそ,就労はひとつの社会参加のルートなのである。社会全体の観点から見れば,さまざまな業界や業種,いくつもの種類の仕事が分業関係を結んでいるからこそ,この社会は円滑に動いている。ひとつの会社組織であれば,それぞれの部署がそれぞれの役割を引き受けているからこそ,会社が機能していく。
現在の社会において,何が「やるべきこと」なのか,どこに課題があるのかを考えることは,子どもや若者の職業(仕事)選択の際の視点となってよい。若い人たちには,働くとは,自らの仕事を通じて社会に参加し,貢献することなのだという意識を強く持ってほしいと思う。
そして,現実問題としても,「やるべきこと」の周辺には,職(求人)は豊富に存在しているのが常である。
児美川孝一郎 (2013). キャリア教育のウソ 筑摩書房 pp.86-87
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