自分で自分を認めたいと思っていても,他人に悟られる場面では自尊感情を高めることができないのが日本人の傾向です。しかしこのような抑圧された本心は,どこかで回復する必要が出てきます。小さくても希望や生きがいがあればよいのですが,それがはっきりしないと,その抑圧された本心は,周囲の人間,特に自分よりも立場の弱い人間に向かうことになります。典型的には,親の本心が,自分の子どもに向けられる,ということが起こります。自分の子どもはこのように育って欲しい,こんな思いはして欲しくない,という感情です。
子どもたちにしてみれば,自分自身の本心を出すことには自重を求められるだけでなく,少子化の影響で親のみならず祖父母たちの一方的な期待(子どもたちにとっては要求)を背負うことになります。この期待—今のままではなく,もっとこうなって欲しいという過剰な期待—が,子どもたちの自尊感情を低めるひとつの要因にもなっているように思えるからです。
古荘純一 (2009). 日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか:精神科医の現場報告 光文社 pp.45-46
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