自尊感情はさまざまな要因で高くなったり低くなったりします。
例えば学校の試験で平均以下の成績であった,成績が大きく下がったということがあれば,その事実に悩み自尊感情は下がるでしょう。しかし,運動能力や,友人の間での人気など,その他の点で自らの価値を感じていれば,その子どもは自分自身についての客観的な情報と,その情報に対する主観的な評価を結びつけること(今回成績は悪かったが,スポーツで挽回しよう。あるいはみんなに聞いてみよう,……など)によって,自分の自尊感情を高く保持することができます。
逆に自尊感情が低ければ,1つの悪い情報をきっかけに,そこから脱却できなくなるのです。
自分自身を評価するには多くの尺度があります。他の人よりも1つ,2つは苦手な尺度があっても,逆にすぐれている尺度もあり,そしてそれが自分である,だからそのよいところを生かしていこう……という前向きの考えができるかどうか。これができれば,自尊感情を保つことができます。この能力は社会生活,対人関係を保つうえで,最も重要な要素です。成績,運動能力,見かけなどは,1つの尺度にすぎないのですから。
古荘純一 (2009). 日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか:精神科医の現場報告 光文社 pp.49-50
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