もうひとつ触れておきたいことがあります。最近,公立の小中一貫校ができてとても人気があるようですが,実際に行った親御さんも私も現場を見て,これは非常に問題が大きいと思いました。子どもたちにとって学校生活は重要な部分ですが,長い人生の一期間にすぎません。家庭環境も,目標も,多種多様です。そのようななかで,9年間という義務教育の時間,同じところで過ごすことは,うまくいった場合はいいのですが,うまくいかなかった場合の代償が,あまりにも大きいのではないかと思います。
親の考え方も生活環境もばらばらの子どもたちが,より広い地域から集まり,9年間も一緒で,しかも上から押し付けの教育をこなしていくのは,子どもにとっては大きなストレスになると思います。私立,および国立大学の付属の学校でも,9年間一緒に過ごしますが,こちらはある程度,子どもたちの家庭環境や目標が似ています。しかしこうした付属の学校でも,学校や同級生との間に悩みを抱えてしまえば,学校生活のストレスは大きくなります。
古荘純一 (2009). 日本の子どもの自尊感情はなぜ低いのか:精神科医の現場報告 光文社 pp.124-125
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