ケースによってさまざまではありますが,恋愛がらみのセクハラのパターンは,大きく2つのサブパターンに一応分けられると言えるでしょう。
1つは,女性は男性と恋愛どころか交際をしているつもりもなかったのに,男性は男女の付き合いをしていると思い込んでいるパターン(これを妄想系と呼びましょう),もう1つは,女性の方も一時的にであれ,交際をしていた,恋愛感情があったという認識があるパターン(現実の恋愛をもとに起こることから,リアル系と呼びます)。
ただし,注意していただきたいのは,この2つがはっきりと別のものというわけではないこと。リアル系にも,妄想に近い勝手な思い込みが少なからず含まれますし,妄想系であれ,性関係を持った事実があったりします。そういう場合,女性の側はまったくの強要,レイプだったと思っているのに男性はそれに一切気づいていません。また,リアル系であれ,女性がセクハラで訴えているからには,そこには男性が気付いていなかった—妄想というより錯覚でしょうか—要素が大いにあります。それに,人の気持ちというのは他人には窺い知れず,しかも時間とともに移り変わりますから,恋愛感情があったかなかったかについての「真実」は誰にも(本人にさえ!)ミステリーだと言えるかもしれません。
牟田和恵 (2013). 部長,その恋愛はセクハラです! 集英社 pp.74-75
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