子供や若者の中には,「友達ができない」という悩みを抱えている人が多い。その種の相談を受けることも実際に頻繁である。そういう人には,「どうして,友達がほしいの?」と尋ねることにしている。「友達がいないと寂しいから」と答える人がほとんどであるが,「では,どうして寂しい状態がいけないの?」と問うと,これにちゃんと答えられる人はまずいない。不満そうに黙ってしまうのだ。
彼らは,「寂しいことは悪い状態だ」と考えていて,「友達がいれば寂しくない」と勝手に信じている。なんの根拠もなく,そう思い込んでいるのである。だから僕は,「寂しくても悪くない」こと,そして「友達がいても寂しいかもしれない」ことを説明するようにしている。そんなことは信じられない,と反発する人もいるが,つまり自分の思い込みが悩みの原因だということに気づいていない(気づけない)状態といえる。さて,貴方はどう思うだろうか?
森博嗣 (2013). 人間はいろいろな問題についてどう考えていけば良いのか 新潮社 pp.87-88
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