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I'm Standing on the Shoulders of Giants.

読んだ本から個人的に惹かれた部分を抜き出します。心理学およびその周辺領域を中心としています。 このBlogの主な目的は,自分の勉強と,出典情報付きの情報をネット上に残すことにあります。書誌情報が示されていますので,気になった一節が見つかったら,ぜひ出典元となった書籍をお読みください。

   

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人間行動の予測は

今日,イリノイ州を本拠とするある会社は,あなたの愛する人の遺灰をたった2万4999ドルで1.5カラットのダイヤモンドに変えてくれる。私自身は,ダイヤの指輪になった祖母に会いたいと思うかどうかわからないが,このテクノロジーの快挙を前にすれば,夜の商売人の大胆さには感嘆するしかあるまい。厳密に言えば,これは変性ではない。灰とダイヤモンドはともに炭素からできているからだ。とはいえ,悪い話ではない。1980年に,科学者グレン・シーボーグは,ラザフォードの例にならって化学元素のビスマスから金を作り出すことに成功した。この偉業を知ったら,ニュートンもきっと喜んでくれるだろう。しかし,そのシーボーグの手順はあまりにもエネルギーを消費するものだったため,経済的には明らかに成り立たなかった。
 それでも,このシーボーグの成功により,科学では長らく疑問視され,いかがわしい幻想とさえ言われてきた分野にも,定量的方法,すなわち物理法則に反しない方法を適用できることが実証された。だとすれば,いずれ科学的手法がさらに洗練されていけば,人間の行動についても同様の進歩を実現できるのだろうか。人間行動の性質を,正確で予測可能な科学に変えられるのだろうか。ウイルスの経路を予測して,感染を避けるためには明日この道を通ってはならないと正確に助言することにより,流行病の蔓延を阻止できるようになるのだろうか。夜のニュース番組は過去の出来事を伝えるのをやめ,むしろ気象予報士のように,これこれの日には人間がらみの問題でこういうことが予測されると知らせるようになるのだろうか?
 これらは根本的な疑問だとはいえ,学問的にはあまりに現状の理解を越えているため,ほとんどの科学者は完全に棚上げにしている。これらの問いに答えるのに,科学のどの分野が——可能かどうかはさておき——最適なのかさえ明らかでない。物理学か?生物学か?経済学か?コンピュータ科学か?心理学か?はたまた各種の社会科学か?そんな状態だから,人間行動の予測は目下のところ,もっぱらビジネスコンサルタントや手相占い師に任されているのだ。

アルバート=ラズロ・バラバシ 青木薫(監訳) 塩原通緒(訳) (2012). バースト!人間行動を支配するパターン NHK出版 pp.80-81
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