どういう種類の人間行動を調べても,つねにバーストのパターンがあらわれた。長い休止期間のあとに,短い集中的な活動期間が続く——それはあたかも,ベートーヴェンの傑作を奏でるバイオリンの音色にうっとりしていたら,いきなり大きな太鼓の音でびっくりさせられるようなものである。バーストは自然界のどこにでもある。各個人がウィキペディア上で行う編集から,為替ブローカーが行う取引まで,あるいは人間や動物の睡眠パターンから,ジャグラーが棒を地面に落とさないようにする微細な動きまで。それは,もはや電子メールやウェブ閲覧という問題ではなかった。私たちは,人間行動と密接に結びついた何か——「誰もランダムになど行動しない」と,はっきり告げている何か——を目撃していたのである。人間がランダムに行動しないこと自体は,さして驚くことではなかった。自分が偶然に支配されているとは誰だって思っていないからだ。人間はみな自由意志を持っていて,それがあらゆる行動を——電子メール送信も,文書印刷も,ウェブ閲覧も——複雑にしている。だが,何をするにせよ,われわれは無意識に同じ法則,ベキ法則にしたがっていたのである。簡単なことのようだが,じつはこれが驚くべきことなのだ。
アルバート=ラズロ・バラバシ 青木薫(監訳) 塩原通緒(訳) (2012). バースト!人間行動を支配するパターン NHK出版 pp.155-156
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