安い物が買えないというのは,出張も同様である。常に正規料金で精算が行われる。企業にいた時は,出張パック等安い方法を駆使することが求められた。札幌には何度も出張したが,往復の航空運賃より大幅に安くてホテルの宿泊,朝食がついている出張パックが多くあり,これを利用して出張していた。そして当然,実費での精算である。しかし,ここでは違っていた。ある出張パックを探してそれで出張しても,それ以上に安いパックがあったら住民に説明がつかないというのが理屈のようなのだ。「貴重な税金」を使うので,説明責任が必要だというのである。「おー,面白い理屈があるものだ」とえらく感心したことを覚えている。
住民からもっと安いパックがあるのに,なぜこのパックで行ったのかとクレームがついたら説明できない。正規料金で出張しましたと言えば誰からも文句が出ないというのである。高くてもクレームがつかないならよいのだ,という発想である。「コスト意識ゼロ」である。確かに,いくら長時間ネットサーフィンをして安い出張パックを探し出したとしても,この出張パックが日本一あるいは世界一安い保証はない。もっと安い出張パックがある可能性はゼロではない。可能性がゼロでない限りは,住民からクレームがつく可能性があるというのである。
菊地達昭 (2011). キャリア妨害:ある公立大学のキャリア支援室での経験 リフレ出版 pp.45
PR