相対評価をする場合,同レベルの集団の中で比較しなければ意味がない。例えば中学1年生と数学のノーベル賞と言われるフィールズ賞受賞者の数学の力を比較しても意味がない。また,市民ランナーとオリンピックのマラソンランナーを比較してみても始まらない。100mをジャマイカのボルト選手と一緒に走れと言われて,はいそうですかと走る人はいない。結果は初めからわかっていて,意味がないからである。
米国でもアップル・アンド・アップル,オレンジ・アンド・オレンジという言い方がある。また,それはアップル・アンド・オレンジとも言う。比較をするならりんごとりんご,オレンジとオレンジとを比較しなければ比較にならないということを言うのである。りんごとオレンジを比較してみても,それは好みの問題であって,どちらがおいしいりんごなのか,あるいはオレンジなのかの比較にはならない,という例えで米国人との会話の中では,よく出てくる表現である。
組織の中での評価も同じである。新入社員と10年のベテラン社員を一緒に人事考課したら,新入社員は常にベテラン社員より高い評価を得ることはできない。秘書と社長を一緒に評価ができると考える人はいないはずだ。そもそも仕事が大きく違い,期待されているアウトプットも違う。人事考課を行う場合,このような違う人たち同士で評価するのではなく,同じレベルの人たち同士で評価するのが原則である。ところがここでは,この原則で評価を行ってはいない。
菊地達昭 (2011). キャリア妨害:ある公立大学のキャリア支援室での経験 リフレ出版 pp.62-63
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