ともかく,人事課のようなスタッフは増員が次々と行われるのに,ラインは減らそうという愚かなことが行なわれている。これも,世の中とは全く正反対の動きである。企業でラインとは,営業部門と製造部門のことをいう。企業で営業部門と製造部門を減らすと何が起こるのかは誰でもわかるはずである。造るべきものが造られず,売ることもできない。造らないのだから売らなくてもよいということになるのだが,売上ゼロ,利益ゼロで倒産する。企業であれば,こんな馬鹿げたことを進める経営幹部はありえない。しかし,ここの経営幹部は,このようなことを平然と進めている。
大学でのラインとは,学生を直接支援する部門である。学務,アドミッション,キャリア部門がこれにあたる。これらの部門は,学生,教員あるいは受験生に直接人間が対応しなければならない部門であり,機械化,効率化は難しい。これらの部門を減らすと,直ちに学生,教員,受験生へのサービスの悪化につながる。住民に対するのと同様に,学生,教員,受験生に対しても,待たせておけばよい,明日来てくれ,来週来てくれと言っていればよいと考えているのだ。
菊地達昭 (2011). キャリア妨害:ある公立大学のキャリア支援室での経験 リフレ出版 pp.233
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