ケプラーは,惑星の運動がどうなっているのかを示す有名な3法則を発見しています。第1は楕円法則,第2は面積速度一定の法則といわれて,どちらも非常に重要な発見でしたが,第3法則は,惑星の公転周期,つまり太陽に対してもその軌道上にある1点を定めたとき,その点から出発して太陽の周囲を1回転して再びその点に戻ってくるまでに要する時間のことですが,この公転周期の2乗と,公転半径,つまり,ケプラーの場合は惑星の軌道は(第1法則によって)楕円ですから,通常この「半径」は,楕円の長い方の半径(長径)の半分と定義しますが,この公転半径の3乗との比が,どの惑星をとっても同じ値になる,というものです。
ケプラーは,この第3法則を見つけるまでに,何年も何年もの間,毎日毎日,やっかいな繰り返すのですけれども,もし,ケプラーの意識のなかに,神はこの自然界を造るにあたって,簡単な整数関係で表現できるような秩序を,夜も昼も続けることはできなかったでしょう。逆にいえば,とうとう惑星の公転周期の2乗と公転半径の3乗との比が一定になるという結果に到達したとき,ケプラーはおどり上がって喜んだといわれています。彼の信念,彼の「偏見」は裏切られずに,みごとに報われたのです。
村上陽一郎 (1979). 新しい科学論:「事実」は理論をたおせるか 講談社 pp.109-110
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