ここで示されているのは,次のような構図である。イギリスの生物学者ダーウィンが1859年に公刊した『種の起源』は大きな反響を呼び,その理論は社会に速やかに普及していった。そしてそれは,進取の気性に富んだ国民性を有するアメリカにおいても例外ではなかった。その地において,最新の科学理論として受容された進化論は,キリスト教の「古臭い教会神学」に止めを刺すものと解されたのである。
しかし他方,ピューリタンによって建国されたアメリカは,実直なキリスト教信仰が息づく場所でもあった。経験なキリスト教徒たちは進化論を,キリスト教の教義に反する邪説として排撃したのである。その際に引き起こされた,生物学的進化論とキリスト教的創造論の対立は,アメリカ社会において今もなお,論争を呼ぶ主題であり続けている。
ともあれ,進化論の普及によって,純朴なキリスト教信仰をそのまま維持することが困難になったことは,疑いようがなかった。また,アメリカ社会の多くの人々は,従来のキリスト教信仰に飽き足りず,より合理的で腑に落ちる新しい宗教観。死生観を求めていた。そうした欲求に応えるために登場したのが「心霊主義(スピリチュアリズム)」の運動である。
大田俊寛 (2013). 現代オカルトの根源:霊性進化論の光と闇 筑摩書房 pp.31-32
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