パスは人々が通常,ある場所から別の場所へと移動するときに使っている線的なルートのことだ。ノードは人々が集まるところ,何かが起こっている場所,リージョンは,ソーホー,ビーコンヒル,アネックスなど,街の中でひとつの区切られたまとまりとみなされる場所である。バウンダリーは線状の要素ではあるが,パスとして使われるのではなく,湖や川の縁,フリーウェー,鉄道の線路などを指す。最後にランドマークについては前に見たとおり,都市のなかのある場所の意味,使い方,気分を象徴するものであったり,街の多くの場所から見えて道案内の役に立つ大きな建造物(シドニーのオペラハウスやマンハッタンのエンパイア・ステート・ビルなど)であったりする。
都市のちがいはおもに,これら5つの要素のイメージしやすさのレベルのちがいであるとリンチは主張する。そのうえで都市計画のためのツールを使えば,都市をイメージしやすくできるし,ツールはそのような使い方をされるべきだと述べている。都市の要素がどの程度イメージしやすいかの判断あ医療は,リンチが歩いている人に頼んで描いてもらった街の地図に,それらが登場する頻度だった。リンチが選んだ3つの都市にある多くの特徴は,どれもイメージしやすいことが示されたが,街の人々が描いた地図は計量的にはまったく不正確だった。位相的には正確なのだが,距離についてはめちゃくちゃで,とくにイメージしやすい要素が頭の中で拡大されていることがうかがえた。
コリン・エラード 渡会圭子(訳) (2010). イマココ:渡り鳥からグーグル・アースまで,空間認知の科学 早川書房 pp.200-201
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