ある意味でインターネットも,他の電子コミュニケーションと同じように,空間を狭くするという現象を生じさせる。私たちは実際の距離をまったく気にすることなく,キーボードを叩くだけで,南アフリカの国立公園でひなたぼっこ中のライオンのライブ映像を見ることができるのだ。
実のところ,クリックをくり返しながらウェブサイトからウェブサイトへと飛んでいく行為には,私たちが頭の中で空間をどう処理しているかが映し出されている。インターネット上の各サイトは,位相の中のノードとして互いにつながっている。私たちがリンク先をクリックするさい,ふつうは見ているサイトの出所がどの方向で,どのくらいの距離が離れたところにあるのかまったくわからないし,それを気にすることもない。これは日常生活の中であちこち移動しているさい,空間の形状をシンプルな位相に還元してしまう私たちの性質の極端な例だ。
コリン・エラード 渡会圭子(訳) (2010). イマココ:渡り鳥からグーグル・アースまで,空間認知の科学 早川書房 pp.239-240
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