母親は聖書研究を始めたので,地元の教会の神父さんに褒められるだろうと思って話をした。
「最近エホバの証人と聖書のお勉強をしているんですよ」
すると神父さんとシスターの顔つきが険しくなった。「エホバの証人とは!」といった顔だった。それを見て母親は司会者に報告した。
「エホバの証人の名前を出しただけであの人たち,サタンみたいな怖い顔をしたのよ」
すると宇野さんはとても嬉しそうに興奮して言った。
「そうでしょ!だってあの人たちは聖書の真理を持っていないんだから。カトリックは自分たちが聖書の何も知らないことを暴露されたくないの。ちゃんと聖書を研究して理解しているのは証人たちだけだから怒るのよ!これが他の教会とのお勉強だったら彼らもそこまで怒らないわ。だって脅威にならないから」
確かにそうだ。聖書に書いてある「エホバ」という名前を出すだけで,あの神父は険しい顔をしたのだから。たぶん,彼らは本当にサタンに惑わされている教団かもしれない。母親は証人たちこそが真理を持っているという確信を強めた。そして,週に1度の研究を2度に増やしてくれと頼んだ。
佐藤典雅 (2013). ドアの向こうのカルト:九歳から三五歳まで過ごしたエホバの証人の記録 河出書房新社 pp.33
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