「ブードゥー教の呪いで人が死ぬ」ことも,立証されている。ハーバード大学の著名な生理学者ウォルター・キャノンがこれを研究し,後にジョン・ホプキンス大学の心理生物学者のカート・リクターも調査した。ブードゥー教の信仰が行われている国では,いたって健康な人でさえ,呪いが自分にかけられたことを知ると,衰弱して死に至るということが実際に起きる。また,それほど昔のことではないが,医学界や科学界は,ストレスが感染に対する抵抗力やガンの成長に影響を与えるという概念を嘲笑したものである。しかし,これが本当に起こることを示す説得力ある実験データが提出され,現在では広く認められている。ストレスによって分泌が促進されるホルモンが,どのように免疫系を抑制するかという問題に関して,「精神内分泌神経免疫学」(psychoendocrine neuroimmunology)の分野で現在盛んに研究されている。さまざまなレベルでの現象を橋渡しする必要があることをこの名は示唆する。
エリオット・S・ヴァレンスタイン 功刀 浩(監訳)・中塚公子(訳) (2008). 精神疾患は脳の病気か? 向精神薬の科学と虚構 みすず書房 pp.183
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