成長し自立を遂げるということは,子どもが誠実か不誠実かのどちらかを選択する能力と責任を持つようになることを意味する。嘘を隠し通すことが不可能だということが分かっていれば,実のところほとんど選択の余地はない。誘惑が生じるのは,騙そうと思えば騙せることが分かっている場合にかぎられる。
自立とは,他人に明らかにする自分自身についての情報をコントロールすることを意味する。そして,プライバシーとは,自分に関する情報を誰がどこまで知ることができるようにするかを自ら決断することだ。こうしたコントロールを行う——自らのプライバシーを楽しむ——ために,嘘をつく必要はない。しばしば親は,「いいかい,お前には関係のないことなんだ。そんなことは訊かないでくれ」とやさしく,あるいはきつい口調で言うが,子どもも時には親に対して同じことを言う権利がある。
ポール・エクマン 菅靖彦(訳) (2009). 子どもはなぜ嘘をつくのか 河出書房新社 pp.152-153
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