ある腕利きの営業マンは,こんなことを言っていた。ある時会社側が,これからは報酬を業績に連動させると宣言した。その人は腕に自信もあり,それなら腕の見せ所とばかりに,さっそく最初の月から,周囲の人も驚くような販売実績を挙げることに成功した。
「さすが○○さんですね。やっぱり,うちの営業のエースですよ」。
本人も得意の絶頂である。うれしくて仕方がない。しかし,給料の査定の時期を迎えて,その人の不満は爆発する。
「何だよ,それ」。
考えてみれば当たり前の話だが,いかに連動させると言ったって,昇給,ボーナスにも上限があり,彼から言わせればお荷物でしかないダメ営業の人間との差をつけるのにも限界がある。しかし,そもそもそんなことで不平を言っていられるような状況ではなくなっていたことに,すぐに気づかされるのである。
高橋伸夫 (2004). 虚妄の成果主義 日本型年功制復活のススメ 日経BP社 pp.116
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