ユーザーとのやり取りの残骸にキラリと光る砂金を見つけたのは,グーグルだけだった。砂金をコツコツ集めれば,輝くインゴットに変わると察したのである。マイクロソフトのスペルチェッカーと比べて性能が少なくとも1桁違うと豪語するグーグルの有力エンジニアもいた(ただし,後に根拠を問われて,きちんと測定したわけではないと認めている)。このエンジニアは,「開発費タダ」という評価を一蹴したうえで,“原料”のミススペルには直接費こそかかっていないが,全体的なシステムの開発にはマイクロソフトを上回る予算を投じたつもりだと胸を張る。
両社の考え方はまったく異なる。マイクロソフトは文章処理という単一目的から,スペルチェックの価値を捉えていた。一方のグーグルはもっと踏み込んで有用性を見抜いていた。ミススペルを基に世界最高・最新のスペルチェッカーを開発して検索性能を高めただけでなく,検索やGメール,グーグルドキュメント,グーグル翻訳での「オートコンプリート」(入力時の自動補完)機能など,多彩なサービスに生かされている。
∨・M=ショーンベルガー&K.クキエ 斎藤栄一郎(訳) (2013). ビッグデータの正体:情報の産業革命が世界のすべてを変える 講談社 pp.173-174
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